『縄文土器ガイドブック』重版

井口直司さん著の『縄文土器ガイドブック』(A5判・2200円+税)を重版することになった。第4刷である!

この企画の発端は、シリーズ「遺跡を学ぶ」で編集している苦労からだった。縄文時代の遺跡の原稿によく「加曽利E式期」とか「諸磯式期」といった土器編年がさらっと登場することが多くて、理解するのに苦労していた。「縄文土器の概略がコンパクトにわかる本がほしいなあ」と思って、そのことを縄文時代研究者の方々に話すと、「縄文土器の全体を見ようなんて、大型本で3、4冊になるよ。一般書1冊でなんてとんでもない!」と言われた。井口さんには、それをやってもらったわけだ。

今日は、井口さんと打ち合わせをするために、井口さんの職場である東京都東久留米市の郷土資料室を訪ねた。その小さな展示室に、市内の遺跡から出土した縄文土器が壁一面に展示してある。

東久留米という武蔵野の一地域内の土器ではあるけれども、土器の変化と特徴が一目で展望できて、わかりやすい。もっと見た目のすごい土器を展示している博物館はたくさんある。しかし、一つ一つの土器に圧倒されることはあっても、縄文時代全体をとおして縄文土器とはどんなものだったのかが見えてくる博物館はめったにない。『縄文土器ガイドブック』がわかりやすい本になったわけがわかった。ぜひ、東久留米市郷土資料室に見に行ってほしい。

「倭人の祭祀考古学」編集開始

3月末の新刊ラッシュを終え、新しい本作りを始めている。毎年4月、5月にもコンスタントに新刊を刊行しようと思うのだが……。

今日は、『倭人の祭祀考古学』の第1次原稿整理を終えた。著者は、奈良大学の小林青樹教授。弥生時代の祭祀、弥生人の精神世界を、さまざまな考古学的知見と文化人類学の分析手法なども取り入れて追究していこうとするものだ。

実証主義を重視する考古学では苦手な精神世界を少し切り開いていこうとする知的格闘を、十分楽しんでもらえるような本作りを目指している。特に、図版。今まで見たこともない図で、それだけに制作に力を入れなくては。

5月中に完成させ、6月頭には発売しようと頑張っています……。

 

シリーズ遺跡を学ぶ117・118出来

24日(金)に、シリーズ「遺跡を学ぶ」117巻『船形埴輪と古代の喪葬 宝塚一号墳』、118巻『海に生きた弥生人 三浦半島の海蝕洞穴遺跡』の見本が無事出来た。書店には4月に入れば並ぶだろう。

今日は、118巻『海に生きた弥生人 三浦半島の海蝕洞穴遺跡』の著者、中村勉さんに見本を渡すために、横須賀市自然・人文博物館で開催された、横須賀考古学会主催の研究集会「墳丘を持たない古墳時代の石棺墓」に行ってきた。

墳丘もなく、海岸にある石で囲んだだけの古墳時代の簡単な墓が、このところ列島各地の海に面した場所で見つかっているという。その事例を発表し、何かを考える集会だ。多くの参加者があって活発な議論があった。

奈良県や大阪府の巨大古墳をみんなが言及するのは、そこから当時の日本の権力の動向を見ることができるから。群馬などの地域の巨大古墳も、その地域の首長・権力を解明するためだろう。では、墳丘もない簡素な石棺墓は、何のために探究するのか。

『海に生きた弥生人 三浦半島の海蝕洞穴遺跡』を編集させていただいた浅学が思うには、主催者側の中村さんはご自分の発表以外はあまり発言しなかったけれども、巨大古墳から権力のヒエラルキーを見てしまうような歴史観ではなく、地域地域にそれぞれの独自の生き方と、そうした人たちの列島のつながりがあるということから歴史に組み立てようよ、と言いたかったに違いない。

N・ルーマン著『理念の進化』

久しぶりにニクラス・ルーマンの新刊を刊行します。4月初旬には書店店頭に並びます。

N・ルーマン著/土方透監訳『理念の進化』
(A5判上製/320ページ/定価3800円+税)

ルーマンは1998年に亡くなっていますから、2008年にドイツで刊行された本書は落ち穂拾いのような寄せ集めの論文集と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、本書に収録された論考は、『社会構造とゼマンティク』のシリーズに入れる構想でまとめられていたものでした。以下の目次を見ると納得していただけると思うのですが、近代の「思考」の前提・根底・中枢となっている、「進化」「階級」「科学(真理性)」「合理性」などの概念を問い直すものです。

●目次
第1章 意味、自己言及、そして社会文化的進化
第2章 社会階級の概念について
第3章 科学の発生──認識獲得システムの分出
第4章 近代社会の合理性
第5章 社会学的パースペクティヴにおける理念史

次のような文章は、ルーマンらしいと言うべきか、意外と言えるでしょうか。

「実際のところどうであったのかを確かめる任務を与えられ、野に出た研究者たちは二度と戻ってこない。獲物を仕とめてくることもなければ、報告することもない。細部の虜となった彼らは嗅覚を働かせ、いつまでもその場にとどまる。」

「個別の歴史的発展にとっての決定的な原因を探そうとすることもナンセンスである。カール・マルクスとマックス・ヴェーバーは、その信奉者たちがどのような追加的な詭弁を弄して抗弁しようと、そうしたアプローチをとっていることからして、お払い箱にされる。」

年度内刊行も大詰め

新年度、新しい春に、書店に並べていただけるように、現在、制作の大詰めを迎えています。作業している本は以下の通り。

 永田夏来・松木洋人編『入門 家族社会学』
A5判/240ページ/定価2300年+税

 ニクラス・ルーマン著、土方 透監訳『理念の進化』
A5判上製/320ページ/定価3800年+税

 シリーズ「遺跡を学ぶ」117
 穂積裕昌著『船形埴輪と古代の喪葬 宝塚一号墳』
A5判/96ページ/定価1600年+税
シリーズ「遺跡を学ぶ」118
 中村 勉著『海に生きた弥生人 三浦半島の海蝕洞穴遺跡』
A5判/96ページ/定価1600年+税

 秋山浩三著『弥生時代のモノとムラ』
A5判上製/432ページ/定価10000年+税

4月に入れば、どれも発売になる予定。

『入門 家族社会学』

金曜日の夜9時に東京駅近くの中央郵便局に行って、執筆者へ校正紙を速達で送った。その本は『入門 家族社会学』。家族社会学の若手研究者13名が、自分たちが教えたいテキストを作ろうということで始まった企画である。4月から使えるようにと、最後の校正に追われているわけだ。

熟練研究者の学生が疑問に思うところ理解しがたいところをよく知っていて、十分配慮がゆきとどいたテキストもいいが、今の問題点をそのまま出したような、ゴツゴツした、ちょっとこだわりが強い若手研究者との本作りも楽しい仕事だ。

「これを知ってほしい!」「このことを訴えたい!」という熱意のある、「ひと味違う」テキストを3月中に刊行する予定だ。

116巻は『上淀廃寺』

シリーズ「遺跡を学ぶ」の115巻『吉野ヶ里遺跡』と同時に刊行するのは、116巻『よみがえる金堂壁画 上淀廃寺』(中原 斉著)である。鳥取県の旧淀江町の上淀集落でみつかった、今は廃れてしまった寺院ということで上淀廃寺というとのこと(現在は米子市)。元は飛鳥寺、法隆寺といった寺名があったはずだが今はわからない。

その上淀廃寺から、壁画が描かれていた金堂の壁材片が出土した。白鳳時代の金堂壁画というと法隆寺金堂壁画しか知られていなかったので、驚きをもって迎えられた。金堂は奈良時代に炎上した。そのために焼け締まって、かえって土の中で腐食せずに残った。しかし、焼けたために、描かれた絵の具の成分により、消えてしまった絵の具があり、白鳳当時の煌びやかな世界がそのまま残ってはいない。

ひとつひとつの壁画片から元の壁画を復元してゆくのが本書のストーリーの骨格になる。壁画片ひとつひとつの写真、そして復元した壁画の画像、それと法隆寺金堂壁画、さらに敦煌莫高窟の壁画と塑像の写真も掲載したので、白鳳の仏教彩色仏教壁画の世界を楽しんでほしい。(結構、費用がかかりました)

上淀廃寺の壁画はかなり熟練した画工によるという。著者は、法隆寺壁画を描いた人物(工房)との関連性も想像している。

『吉野ヶ里遺跡』の制作終了

シリーズ「遺跡を学ぶ」次回配本の115巻『邪馬台国時代のクニの都 吉野ヶ里遺跡』の制作がやっと終わった。本来ならば1月末刊行の予定だったので、1ヶ月近く遅れたことになる。見本は今週の水曜日22日の予定。書店に並ぶのは3月1日頃になる。

吉野ヶ里遺跡というと、原寸大復元した歴史公園に行ったことのある人も多いだろうし、多くの人がその映像を見たことがあるだろうし、著者の七田忠昭さんはさまざまな場と形で吉野ヶ里遺跡を語っているので、本シリーズ「遺跡を学ぶ」はどのような特徴のある内容にするかが悩んだ点だった。

総花的に触れるべき点は触れたが、最終的には、弥生時代前期から終末期まで誕生、発展、終息してゆく「吉野ヶ里集落」の内容をていねいに解説することを七田さんにお願いした。
「結局、吉野ヶ里遺跡とは何なのか?」という疑問をみなさん持っていると思うが、本書をぜひ読んでみてほしい。

 

シリーズ「遺跡を学ぶ」編集会議

シリーズ「遺跡を学ぶ」は、編集委員の先生方に、取り上げる遺跡とその執筆者の選定や編集作業について指導・助言をえて刊行している。その編集委員会が12月9日(金)におこなわれた。

編集委員は、おもに旧石器時代を担当していただいているのが小野昭先生、縄文時代が勅使河原彰先生、弥生時代が石川日出志先生、古墳時代が佐々木憲一先生、古代が小澤毅先生、中世が小野正敏先生と、本シリーズを企画していただいたのが故戸沢充則先生なので明治大学出身の方が多いけれども、そうした出身を超えて、どの先生も各分野の重鎮である。

読者からはよく「何であの遺跡がないのか」「○○遺跡を刊行してほしい」という要望をいただくが、まだ発掘調査が進行中で執筆まで行かない遺跡、報告書が出ていない遺跡、適任の執筆者がいるかいなかなど、刊行できるには条件が揃わないとできない。編集委員の先生方はそうした状況にくわしく、執筆の適任者を選んでいただいているのである。

また、考古学として必要な内容、考古学的な叙述、これからの考古学について的確な指摘を受け、「編集作業はもっと深く考えてやらなきゃ」「ようし、もっと良い内容にするぞ!」と、新たに気合いを入れている。

戸沢充則の学問を考える

この土日に、諏訪湖のほとり、岡谷市に行ってきた。ここには2012年に亡くなった戸沢充則氏の論文・書籍などを整理保存し勉強できるようにした「海戸塾」という場があり、今回は戸沢充則氏の研究の内容と意味を考究する書籍の企画で、執筆者たちが集まって各原稿を検討したのだった。

戸沢氏の学問については、本人自身が生前にまとめた書籍を当社から刊行しているので(『考古学のこころ』『考古地域史論』『歴史遺産を未来へ残す』『語りかける縄文人』等)、新しい内容になるのか不安もあったが、執筆者の発表を聴くと、新しい視点や戸沢氏の重要な論点の意味が改めて深く理解できることもあって、この企画が必ず良い本になると実感した。

これらか完成原稿の執筆、編集作業をへて、七回忌にあたる2018年4月に刊行する予定である。

20161120%e4%b8%8a%e3%81%ae%e6%ae%b5(写真は、茅野市上之段石器時代遺跡にて)